理事会の役割とマンション会計

 

マンション管理においては、
  総会  : 最高意思決定機関
  理事会 : 執行機関
 
と位置づけられています。
「そんなこと知ってるよ。」と思われる方が多いと思いますが、この内容を厳密に考えたことのある方は案外少ないのではないでしょうか。

 

例えば、理事会には「決定する権限」は無いので、「今期、これだけの予算があるから、懸案になっているあれをやろう。」とその期の理事会が決めて実行することは間違いです。理事会ができるのは、「総会で実行することが承認された事業計画」および「管理規約で理事会に附託された日常管理業務」を粛々と執行するだけです。

 

言葉を変えると、理事会の主要な役割は、
① 前期の総会の決議事項を確実に実行すること 
(総会で決まったことは必ずやらなければならないし、決まっていないことをやってはいけない。なお、緊急に必要な事案が起こった場合は臨時総会を開催すればよいのです。)
② 次年度に実施する事業を計画し、予算を付けて議案化して、当期の通常総会にかけて承認を得ること
(理事会の権限でできることは議案を作ることです。)
の2つです。その他の日常管理業務はできるだけ管理会社や委託業者に任せ、理事会は結果をチェックする程度にすればよいのです。

 

このような考え方から、マンション管理の会計は一般の企業会計とは異なります。
企業会計では、部署ごとに年度の予算を割り当て、各部署は与えられた予算内で最大の効果を得るように自らその年度の事業を計画して実行する、という会社が多いと思います。

 

一方、マンション会計では、年度の予算は前年度の総会で実行すると決めた事業の見積り金額の積み上げになりますので、予算の用途はすでに決まっており、理事会がその事業を実行しなかったり、違う事業に予算を使ったりすることはできません。もちろん台風被害など突発の出費に備えて多少の予備費は取っておきますが、やることをやっていれば、年度末の収支決算は±0円近くになるはずです。貴マンションでは一般会計の年間予算を上回る繰越金が残っていますが、企業会計の考え方と混同されて、やるかどうか未定だがとりあえず予算を取って、結果、やらなかった、ということが多かったのではないかと想像しています。

 

そこで、理事会は次年度に実施する事業を計画しその見積りを予算化するという手順を確実に実行していけば、通常総会にかける収支予算案が具体的かつ透明でわかりやすいものになるだろうと思われます。当期の理事会でお手伝いしていきたいと存じます。